4/1弁護側弁論①

4/1弁護側弁論
担当:高野弁護士

人の記憶はもろく、移ろいやすい
現に、出廷した証人の証言もバラバラ
林郁夫や井上は100回以上の取り調べを受けている
その間に彼らの記憶はどう変わったのか
オリジナルの体験そのものを話すのは不可能
さらに問題、共犯者の自白は危険
自分一人ではないんだと主張して刑を薄めようとする
これは当然のこと

刑事裁判とは、被告人と検察官のどちらが正しいかを競うものではない
疑問が残る場合は無罪にしなければならない
これは検察には負担だが、国家と個人の関係において冤罪が続出してしまう可能性がある
みなさんは証拠だけに基づいて決めなければいけない
マスコミは証言を切り取って、まるで正反対の報道をする
みなさん(裁判員)が真実に一番近いということを私は確信している

<VX事件>
議論すべき点
①被告人は、VXを浜口さんにかけることが人が死ぬ危険性のあることだと認識していたか
②山形らと、浜口さんを殺す意思が通じ合っていたか
③被告人は、VXを永岡さんにかけることが人が死ぬ危険性のあることだと認識していたか
④山形らと、永岡さんを殺す意思が通じ合っていたか


当時の被告
VX=教団が被害を受けている
VXを教団が作っているとは考えていない
1994/11/28
山形が水野さんにVXをかけるのを見て、初めて教団がVXを作っていることを認識
しかし、教団・科学技術省・村井たちが作るもので、ニセモノだと認識
↑について証人の証言
H:村井が作ったものはろくでもない
山形:科学技術省が作ったものでうまくいったものは何もない

実際、1度目の後に水野さんがピンピンしていたことを認識
1994/12/2に再び山形がVXをかける→緊急搬送
緊急搬送を被告人に伝えたのか?
新実:今川で伝えたことはないし、誰かが伝えるのを見ていない
中川:搬送されたのを伝えたか、今思い出せる限り、ない
井上:新実と中川と私で盗聴の状況について話した記憶があるが、部分的なもの
H8.2.5の井上の供述調書にも、高橋と山形に水野さんの容体について話した等は記述がない
↓一方
山形:全メンバーのいるところで、「アゴが外れて泡を吹いた。ポア出来たのでは。」という発言があった
↑新実や中川の証言とは食い違う。また、この時点でポアという言葉が出るのが変
H:水野さんの結果を聞いたのは、盗聴した日ではない

ホテルコンソルトにて
山形:中川に聞いたら、ICUから一般病棟に戻ったみたいだと言われた
(井上、新実、HSもこの話は聞いていない。せいぜい二人の雑談)
新実:被告人は会議にいたかな?程度
H:被告人が何か発言したら珍しいけど、そういうことは覚えていない。自分自身、かけ方は役割ではないので関心はない

上祐:秘密のワークのときは、知ってはならない、聞いてはいけない

西田教授:いいこと・悪いことなど考えてはいけない
大田教授:疑問や批判を呈してはならない。これがマハームドラー

H:情報共有はなかった
M:疑問や疑念が湧いてはいけないので、なるべく情報を入れないようにしていた

昨日の検察側論告では、ホテルコンソルトでの地図の話は会議の最後に出たとされたが、順番についての一致した証言はない
また、役割の指示は冒頭のなされるのが自然ではないか

車の中に中川がいたことについて
それが人を殺すことには結びつかない
この建物にはAEDがあるが、ここで心筋梗塞が起こるってことではないのと同じ
高橋:気分が悪くなる位はあるかな
→漠然とした不安・推測に過ぎない、①の根拠にはならない


共謀=共同謀議
「犯罪をやる」という意思の連絡
タクシー運転手が、後ろに乗っている二人の「これから盗みに行く」という会話を聞いて、目的地まで届けることが罪になるのか

「ほっほっぴゅ」≠浜口さんを殺害すること
中川:都会でほっほっぴゅしても死なないのでは
井上・新実もそれは分かっていた
本来のポア・・・殺人と考える人はほとんどいない
殺人に関わっていないと知らない

1994/12/12浜口さん死亡
これを誰が被告人に伝えたのか
新実:浜口さんが死んだことは高橋には伝えてない
井上:誰かに伝えたことはない
中川:伝えるほどの接点がないし、他の人が伝えているのを見たことも聞いたこともない
泰男:地下鉄サリン事件後に高橋が「教団がVXで人を殺害できるわけがない」と言っていた

ホテルコンソルトにて
山形:コンソルトで井上が「会社に電話したら入院したと言われたのでポア出来たのではないか」と言っていた
中川:井上は「会社に出ていない。病院にいったらしい」と、搬送ではなく風邪で行ったような言い方だった。その後に死亡を確認したが被告人には伝えていない

中川の手にVXが付着してしまったとき
中:「注射してくれないか」と聞いた。本当に生命に危険が迫っているような感じではなく、出来るんだったらちょっとやってみて、という感じ
→医師が危険を知っていれば自分で注射をするはず

③④
新実:VXをかけたけど効かないから、撤収して帰ろう
H:針さえなかったら、一命は取り留める
針を刺さなければ死なない、液体をたらす方法では死なないという認識
針が刺さらない方法を選択≠永岡さんを殺害すること
H:本当に殺そうというより、何らかの危害を加えて黙らせようという感じ

<仮谷事件>
検察は、逮捕監禁ではなく逮捕監禁致死を主張しているが、この場合逮捕監禁としぼうには因果関係が必要
①仮谷さんは本当に麻酔の副作用で亡くなったのか
②麻酔の投与は被告人の行為と呼べるのか


中川には、チオペンタールの量について信頼できる証拠はない
チオペンタールの量について信頼出来る根拠はない
3/1 林郁夫が監視
0時 医学的覚醒
2時 完全な覚醒(投与した麻酔の影響を脱した)
郁夫:体を揺さぶれば 「オウムがやった、オウムがやった」と言った
3時 ナルコを開始
=実施のために少量の麻酔薬を投与
通常のナルコと変わらない醒め方
10-20mgのチオペンタールを2回投与
9:00~9:30 中川へ引継ぎ
引き継ぎの際、呼吸・脈拍・バイタルサインは全て正常
→この時点で死の危険はなかった
郁夫:この人が亡くなる可能性は、誰にでも起こりうる不整脈しかない

中川:井上に電話し、HSと高橋に話をするため15分ほど仮谷さんのもとを離れた
↑そもそも、仮谷さんを一人きりにする必要はない
H:中川と交代で仮谷さんをみていた

中川:瞑想室から電話のある事務室までは片道1,2分
井上:中川から「Iを上九に連れてきて」と言われた
→15分もかからないのではないか
中川:死亡と判断した最大の根拠は光が見えたから
中川は救命措置を全くせず、道具があったのに、気道確保や挿管、人工呼吸もしていない
井上:中川から「ポア出来ると言われている薬物を点滴したら亡くなってしまった」と言われた
↑曖昧であり、必ずしも信用できるものではないが、中川が語る仮谷さん死亡の状況があまりにも不自然であり、井上証言は全面的に排斥することは出来ない
もし、中川の話を信じたとしても、医師中川による不作為による殺人と言える

郁夫:中川に対し「問題は呼吸の管理だから注意して」と言った
中川:引き継ぎ後のチオペンタールを1g(=1000mg)投与した
一番重要なことが監視だと知りつつ
中川:このようなことを認識しながら、15分も仮谷さんのもとを離れた
この前に麻原からポアしろと言われており、消極的に殺人したのでは

被告人の認識等
今川の家にて
1,信徒の居場所を聞き出す
2,ボディーガードを排除することが役割
どこへ、どのような方法で、どのようにして等の説明は全くない

目黒通りにて
1,信徒の居場所を知っている人を連れて行く認識
2,無理やり車に押し込むということも認識
現場に中川がいることは理解したが、なぜ中川がいるかについての説明はなし
松本:中川に特別な役割があるという認識はなかった
↑井上のみ異なる証言
井上:それぞれのメンバーの役割を確認、中川が薬を打って眠らせることも説明
このような証言をしているのは井上だけ
さらにH7.7.3の上申書には中川の役割を確認したとの記載はない
今回「部下をかばった」と言ったが、これは意図的な嘘

目黒通り〜第二サティアンまでの移動中
高橋:中川が仮谷さんの足に注射をするのは見た
その後仮谷さんは眠りに落ちたので、眠らせる薬と認識
点滴するのも見た

第二サティアンにて
井上:麻原の支持を受けて、ナルコをしろという指示だと思った
N:方法について麻原からの指示はない
高橋:着替えとコンビニへの買い出し以外はずっと車の中で寝ていた
中川:いずれにしても、高橋は第二サティアンのなかにいなかった

そもそも被告人はナルコを知らない
井上:H6.9月頃、平田悟と被告人に、林武に麻酔をかけて女性信徒の居場所を聞くことについて話した
H:誰がどうやって聞き出したかは聞いていない
林郁夫とナルコは結びつかない
H:医師である以外知らない
平田信:自白剤と郁夫はつながらない